2021年04月25日

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第1894例会

 

 

リーガロイヤルホテル広島

ゲスト卓話
「献血の必要性について」

 

 

 

 

赤羽克秀君
広島県赤十字血液センター 
前事業推進部長(現シニアアシスタント) 戸根 安洋 様

 

 

 

 私は、広島県赤十字血液センターの戸根と申します。今日は本当に貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。日頃から、この広島中央ロータリークラブの皆さんには多大なるご貢献をいただきまして、本当に感謝しております。血液の確保はもとより、近年、課題になっております若年層への啓発、こちらも併せてご協力いただきまして、私どもとしては本当に心強い限りでございます。ただ、先ほどお話がありましたように、昨年6月はコロナの影響で見送られたということで、今後、期待をしております。また違うかたちでご協力をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほど来のコロナですが、私ども血液事業にも昨年は多大な影響がございました。私が血液事業に携わって30年以上たちますが、本当に初めての経験です。災害等で局所的に一部の地域で血液の確保が難しくなったということはございました。そのようなところには全国で応援をしていったわけですが、この度のように全国で血液の在庫が厳しくなるという経験をしたのは初めてでございます。しかし、多くの方に献血のご協力をいただきまして、昨年度はなんとか血液の需要に対して支障なくお届けすることができました。あらためまして、献血に対するご理解が国民全体に行き渡り、温かい助け合いの社会が醸成されているということを認識させていただきました。
 またもう1つは、私ども日赤がコロナによって事業ができなくなると、血液をお届けできなくなるということで、あらためて責任の重さを痛感した次第です。今後も私どもは、人の命を守るため、必要な血液を確保していくために努力していきたいと思っております。そのような献血の現状を皆さまにご理解いただきまして、今後も一層、ご協力いただければと思います。本日は貴重なお時間をいただき、ご説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それから、1つ、お願いがございます。私がこのお話をいただいたとき、山本所長から、「ちょうどお昼を食べたあとで眠くなる時間よ」と言われまして、眠くならないような、面白いお話をというプレッシャーを掛けられた次第なのですが、なかなかそのようなお話は苦手なものですから、眠くなられる方は所長にわからないように寝ていただければと思います。よろしくお願いします。
 早速ですが、本題に入らせていただきます。本日は、血液の働きと輸血用血液について。そして、これらを集めるための献血の体制、安定してお届けするための仕組み。そして、コロナウイルスと献血の意思。最後に皆さまへのお願いということでお話をさせていただこうと思います。こちらは皆さま、ご承知のとおりだと思いますが、血液そのものは単体で、赤い一つの液体となって、このなかには血漿成分、血球成分が含まれております。いろいろな成分が含まれて、それぞれの働きを体内で行っております。血球には血小板、白血球、赤血球とございます。
 赤血球の働きを簡単に申し上げますと、肺で取り入れた酸素を体外に運んでいき、不要になった二酸化炭素を肺に返すという運搬作用を行っています。そして、血小板につきましては、止血ということで、傷口などに付着して出血を止めるといったことを行っています。そして、白血球、こちらは体内に入った病原体や異物から体を守るということで、免疫に深く関与しています。いろいろな種類の白血球がございます。この白血球は、輸血用血液のなかにありますと、赤血球を溶血したり、血小板の凝固をさらにしたり、患者さんにとっては重篤なアレルギーなどを発症するということで、輸血用の血液としては使われておりません。55%を占める黄色い液体ですが、こちらのなかには凝固因子製剤やタンパク質などがあり、体内に必要な栄養素を送ったり、免疫に関係する働きをしたり、止血に対応する働きをしたり、こちらも非常に重要な働きをしております。それぞれ血液の成分は重要な働きをしていますが、病気や怪我でつくられなくなり、出血をしますと、輸血が必要になってくるわけです。
 そして、輸血用の血液の種類です。まずは血漿製剤、先ほどの血漿の上澄みです。それから、血小板製剤、赤血球製剤とございます。そして、この血漿からタンパク質を取り出して凝縮したものが、血漿分画製剤という薬にもなって役立っております。先ほどの輸血用血液の目的は、赤血球製剤であれば、赤血球が少なくなったときや出血したときの補充、そして血小板についても補充をします。基本的に輸血というのは補充療法です。血液が少なくなり、できなくなると補充をしてあげるというのが、基本的には輸血療法です。こちらは保存の方法です。赤血球製剤は2度〜6度、血小板製剤は20度〜24度、血漿製剤は凍結しまして、マイナス20度以下というかたちで保存されております。
 これらは、悪性新生物や血液・造血器などの病気、心臓などの循環器系、胃や肝臓などの消化器系の病気に使われています。輸血は、交通事故に遭って救急車で運ばれる、お産などで大量出血をしたときに使われるイメージですが、実際にそのような率は非常に低いのです。ほとんどが、がんや造血器、白血病など、臓器の治療に使われていますので、お1人が長期にわたって使われる場合もあります。1回で輸血が終わるのではなくて、お1人が何回も輸血をすることもございます。
 どのような年齢の方が輸血をされているか、このような病気で使われているということからもおわかりになるかと思います。60歳から69歳、50歳から59歳、40歳から49歳とありまして、60歳以上で78%以上を使っています。70歳以上であれば、63%以上を使っています。当然、これから高齢化してまいりますと、輸血を使われる頻度が高くなってきます。
 広島では輸血はどのように使われているのでしょうか。こちらは県内の昨年度の状況です。赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤と、それぞれ献血方法の種類がございます。一日平均では、赤血球製剤195本、血漿製剤35本、血小板製剤80本と、トータルで約310本の血液が毎日使われている計算になります。輸血によって多くの方が命を救われているということは、血液が毎日のようにこれだけ使われているということです。これだけ使われるということは、これだけ確保しないといけない、ご協力いただかなければいけないということです。
 次に、血液はすべて献血で賄われているわけですが、その体制についてご説明をさせていただきます。献血によって血液を確保するというのは、2003に施行された「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」という法律に明記されております。輸血で得られた血液を原料とするということです。それを安定的に供給されるように確保しなければならない。また適切に使用されなければならない。これがこの法律の基本理念です。もっとたくさん内容的にはあるのですが、血液事業の基本理念というのは、献血で得られた血液を安定的に確保するというところです。
 そして、それぞれの状況を確保するため、それぞれの関係者の責務が法律に明記されています。国は基本的な政策を決定し、地方公共団体などは献血の推進啓発、それぞれの自治体の献血計画、そして、それらを日赤は採血事業者ということで、献血受け入れの計画や実施を行うということが明記されております。協力団体、これはロータリークラブの皆さまもそうですが、献血の推進にご協力をいただくといった構図で現在の血液事業は成り立っております。これが広域事業運営体制といいまして、従来は各血液センターで確保していたのですが、効率化ということ、検査体制で安全な血液を確保していくこと、安定供給をするということは、なかなか高齢化が進んでいる昨今、県ごとにそういった体制を取るのは難しいということで、従来は各県で確保していたものを、平成24年度から7つのブロックに分けて、ブロックで一体となって確保する体制に変わっております。こちらは中四国ブロックセンターを中心に確保しています。
 広島県赤十字血液センターは、県民の皆さまの採血をして必要な血液をお届けするということを担っております。このあいだの検査、製造、それぞれ中四国全体での需給管理は、中四国のブロック血液センターというところが担っております。山本先生はこちらの地域の所長であられますが、小林先生はこちらの所長としてご協力をいただいております。広島県内では、採血バスが福山市と広島市にございます。移動採血車3台がこちらにございまして、福山市には1台ございます。このような体制で献血を確保しておりまして、供給業務を広島、だいだい色のところですね、こちらのエリアを担っております。福山方面は福山供給出張所となります。こちらで必要な血液をお届けする体制を取っております。
 皆さまに安全な血液を安定的にお届けするために考えなければいけないことがございます。供給施設はこれだけあるのですが、こちらで安定的にお届けする体制を取るには、安定した血液の確保が不可欠になっております。ところが、一つ問題といいますか、大事なこと、考えなければいけないことは、血液には有効期間がございます。八百屋さんでもそうですし、業者でも、製造工場でも、在庫管理が非常に大事になってきます。私どもの血液も、在庫をいかに有効に無駄なく確保させていただくかというのが非常に大きな課題となっております。しかも血液の場合は血液型がございます。そのようななかで在庫を管理し、善意の血液を無駄なく、お1人でもたくさんの方に供給させていただくために、これまでの実績に基づいて必要な供給本数を立てます。この必要な供給量に基づいて採血計画を立てるのです。
 供給本数は血液の製剤別、先ほどありました赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤、それぞれの供給数と血液型別、これらを供給計画といい、これまでのデータに基づいて予測を立てます。そして、それに基づいて今度は採血計画です。これも成分献血や400mL献血、200mL献血を移動バスや献血ルームで採るのですが、それぞれを割り振って採血計画を立てます。実際にこれが採れなければ供給できなくなるので、この供給計画を達成するためにさまざまな献血推進の活動を行っています。
 ところが、供給計画も未知数です。過去の実績が必ずしも当てはまるわけではありません。また採血も必ず確保できるとは限りません。血液のバランスもわかりません。したがって、絶えず検証をしながら採血の調整を行っております。
 こちらは2カ月先の在庫の管理を行っております。これはちなみに4月21日のデータなのですが、4月、5月、6月、すでに6月までの供給計画と採血計画をこのように立ててシミュレーションを行っております。ここのラインが適正在庫の100%です。日々、使われる血液の3日分を適正在庫としております。3日分あれば、何か突発的な事故や大きな血液型の偏りがあっても確保できる、供給できるであろうという数字を適正在庫といい、目指しているのは120%から180%近く、このあいだであれば余剰にもならず、お届けもできるというラインを一つの理想として採血調整を行っております。現在のところ、おかげさまで5月、6月はなんとか安定在庫を保てる状況になっております。ただし、これも供給計画どおりいき、採血計画どおり採られればという前提のもとです。
 安定在庫を確保していくよう努めてはいたのですが、昨年はコロナの関係で大変苦労しました。昨年1月15日に県内で初めてコロナウイルスの感染者が確認され、それ以後、爆発的に感染者が増えていき、4月には非常事態宣言がありました。一昨日ですか、4つの地域でもまた出ましたが、昨年4月16日、全国的に非常事態宣言が発令されました。延期になりながら、5月25日に解除になったわけですが、その間も、これまでもずっと、第1波、第2波、第3波と、全国的にコロナウイルスの感染者が増えてきております。献血についてはこの2月から、非常事態宣言中も後も全国で4,000件の辞退がございました。先ほどご覧になったシミュレーションは、すべて献血をしていただいたという仮定のもとの在庫でしたが、そういったところが辞退、広島県でも96件の辞退がありました。全国的にいまだかつてない非常事態になってきた状況です。
 先ほどのシミュレーションがどのようになったかといいますと、これは3月2日のものです。2月、3月と、ある程度、確保はできているのですが、4月に入ってこれだけ落ちてきます。これは60%のところです。O型については一番下の50%です。もう病院で血液を使うことができなくなる事態が生じるようなシミュレーションになってしまいました。一つには、3月から4月の境目というのは献血車が少ないのです。移動バスも出すところが非常に少なくなるので、あらかじめ3月にかなり多くの在庫を抱えて4月に入っていくのですが、先ほどの辞退があったためにこのような状態になっておりました。
 そこで国には、これは厚労省の文書ですが、各県に献血に協力するようにという文書を出していただきました。移動採血の実施場所の確保にも協力しなさいということでいただきました。広島については、先ほどの辞退になったところは、街頭での献血とか、免許センターに変わって別のところでなんとか血液の確保はできました。先ほど3月3日のシミュレーションをお見せしましたが、3月4日に血液が足りませんというのを報道で流していただきました。これは幸いにといいますか、3月5日、池江さんが献血の呼び掛けをしてくださいました。ご自身が血液を使われたということもあって、血液が今、足りないらしいので、皆さん、献血をしてくださいというTwitterを出してくださいました。これにより、もちろん各報道機関のご協力、あるいは自治体、行政の協力などもあり、3月はぐっと増えました。多くのご協力をいただいたおかげで、4月に入って落ちても、なんとか適性の範囲内で血液を確保でき、お届けすることができました。
 昨年度は近年まれに見る血液確保が厳しい環境でしたが、皆さんのおかげでなんとか血液を確保することができました。しかし、まだまだコロナは収束しておりません。今後も感染がますます広がる懸念もございます。そのようななかで、新しい生活様式、つまりテレワークとか、不要不急の外出自粛、イベント自粛等で、今後も献血の実施ができなくなる可能性は高いのです。そして、実は今現在、ワクチンを打つと献血ができない状況です。通常、ワクチンによっては24時間、または4週間空ければいいという状況なのですが、このコロナウイルスのワクチンにつきましては、まだ厚労省から通知が出ておりません。したがって、現在のところ、ワクチンを打たれた方には献血をご遠慮いただいている状況です。さらには、こちらのコロナに関する基準がございます。感染症と診断された方はもちろん、検査で陽性になった方、あるいは濃厚接触の方は、まだ献血をしていいとはなっていないのです。
 ですから、非常に献血者集めに今後、苦労するであろうということが見込まれます。私どもとしましては、企業などでの献血が難しくなるのであれば、街頭献血を増加して、ボランティアからのお助けをいただきながら、キャンペーン等を展開していきます。あるいは、献血ルームでも採血を強化していきます。そして、献血登録者を増やしていきます。メールで献血のお願いをさせていただく方々、今、「ラブラッド」という名前で会員の登録を推進しております。こちらの登録を一層強化いたしまして、皆さんにご協力をいただければと考えております。
 そして、最後に皆さまへのお願いです。6月には基町クレドでの献血ができない状況です。ぜひとも皆さまの職場の方、あるいはご家族の方に、献血にご協力いただけますようお願いいたします。これは献血バスでも、献血ルームでもご協力をいただければと思います。これは決して絶対というわけではないのですが、センターが企画する街頭献血の呼び掛け活動をしていただくほか、献血ルームでの紹介者キャンペーンなど、ちょっとした記念品を出していただいて、キャンペーンの主催になっていただくなど、私どもが考え得る提案、内容をこちらに列挙しております。ぜひご協力をいただければと思っております。
 そして、私は三十何年間、この献血制度に携わってまいりました。学生時代はまだ院内採血がありまして、そちらに患者さん、ドナーをお連れしたりもしておりました。そのときには、やはりお金が介在します。それがなくなってからも、献血手帳には預金通帳のように献血する欄、供給欄というのがございました。その手帳を売買するということもございました。本当の意味での献血というものが浸透したのはここ最近です。これによって、いつでもたくさんの方が必要な血液をきちんと使えるようになりました。このコロナで、当たり前であったことが実は当たり前ではないと、本当に身に染みて感じております。あらためてこの献血の必要性をさらに訴えていきたいと思っております。この献血の輪をもっと大きくして、この世の中が思いやりに満ちた社会になるように、ぜひともお手伝いをいただければと思っております。簡単ではございますが、説明を終わらせていただきます。

 

 

 



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