2021年03月15日

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第1889例会

 

 

リーガロイヤルホテル広島

会員卓話
「COVID-19と人体常在菌」

 

 

 

 

淀江 晃太郎君

 

 

 これまで嶋本先生、村上先生と医療分野の専門家の視点でのCOVID-19の卓話を賜りましたが、今日は微生物の観点からCOVID-19と人体常在菌の関係についてお話しします。

1. ウイルスについて
 細菌の大きさは約1μmです。1μmというと定規の1mmの千分の一です。ウイルスは更にその十分の一で非常に小さな生き物です。でもマスクの目の大きさは約5μmなのでウイルスからするとザルで口を覆っているようなもので楽に素通りできます。ただ飛沫感染の観点で言えばある程度の効果は期待できると思います。
次にヒトに感染するコロナウイルスですが、今回の新型コロナウイルスは実は7番目に見つかったコロナウイルスで、かつてはSARSやMARSが蔓延した事もご記憶にあると思いますが、いずれもコロナウイルスの仲間で、中には通常の風邪の原因になっているコロナウイルスも4種います。ですから皆さんもかつて知らないうちにコロナ感染していた事もあるかも知れません。

2. PCR検査について
 昨年来新型コロナ感染症が蔓延するとともにコロナウイルス検出のための検査方法としてPCR検査が感染の尺度として取り入れられました。そして、メディアでは、PCR検査陽性を持って感染症として報道しています。
 しかし、症状が発症するまでに下記の様なステップがあります。
 1. ウイルスとの接触(暴露)
 2. 感染(細胞への定着)
 3. 発症(症状の顕在化)
 それにも関わらず、PCR検査においてコロナウイルスの遺伝子のごく一部が検出されると陽性と判断し、感染者数として報道しています。
そして下記については不明なのです。
 1. ウイルスが生きているのか死んでいるのか?
 2. ウイルスが細胞に感染しているのか?
 3. 感染した人が発症しているのか?
 4. 陽性者が他人に感染させるだけのウイルス量を持っているのか?
 5. ウイルスは今いたのか、以前いたのか?
  そうです、ウイルスが死んでいても、暴露した状態で感染もしていないのに遺伝子さえ見つかれば陽性者とされ、感染者として報道されているケースもあるのです。ですからPCR検査陽性者≠感染者数ではないのです。

3. 人体常在菌について
 我々は好むと好まざるにも関わらず常に皮膚、口腔、消化管、生殖器などありとあらゆる部位の環境に適応した微生物と共存しています。その数500種500兆とも言われ重さにすると1.5kgにもなると言われています。その常在菌は我々とってとても有益なはたらきをしてくれています。
 ・免疫システムの構築
 ・病原菌からの防御
 ・難消化性食物繊維の消化
 ・ビタミンB、Kなどの合成
 この様に常在菌の存在なくして我々は生きていくことができないのです。一方で病原菌によって命を奪われる事もあります。この事から我々の寿命というのは微生物と共存できる期間と言えなくもないと思います。
 さらに新しい生活様式の普及により我々のカラダから有益な菌がどんどん減少しているのをご存知でしょうか?
 ・薬剤の使用頻度の増加
 ・ストレス
 ・帝王切開の増加
 ・少人数の家族
 ・潔癖症
 ・食物繊維を摂らなくなった
 ・ファーストフード、化学物質の多い食事
 以上の生活を余儀なくしている我々の常在菌叢の多様性は下がり、バランスも乱れてきています。
 この多様性の乱れのことをマイクロバイオームの世界ではディスバイオーシスと呼んでいます。ディスバイオーシスが起こると癌、糖尿病、認知症、アレルギーなど多くの全身疾患の引き金となります。

 このような環境に置かれながら、らさらに新型コロナ感染症の蔓延により、三蜜を避ける、手洗いやマスクの励行、渡航制限などが加わることで我々の常在菌はますます脆弱になってきます。
 短期的にみれば、上記の取り組みにより一定の効果は得られましたが、長期的な観点からみると人体常在菌の多様性の乱れは、逆に感染症に罹りやすい体質を生み出すことに繋がるのでないかと危惧しています。

4. プロバイオティクスの応用
我々が何かの病原体に出会ったとき、
 ・感染するのか?
 ・発症するのか?
 ・軽症か重症か?
 ・死亡するのか?
 ・合併症や行為書が出るのか?
 これらは病原体によるというより、むしろその人が持つ免疫力によって決まります。その為には人体常在菌の多様性と良好なバランスを維持することが重要となります。事実、COVID-19における重症化の要因は高齢者、肥満、高血圧、糖尿病と言われているが、いずれも人体常在菌の乱れと関連していました。 

 そこで、お勧めするのが、
 ・プロバイオティクス(生命体に有益な微生物で常在菌の多様性とバランスを維持)
 ・プレバイオティクス(プロバイオティクスに有益な難消化性食物繊維)
 ・ビタミンD(免疫機能の維持にはたらく)
などを摂取することです。これにより、ディスバイオーシスを正常化し、免疫機能を維持することで感染症を防ぐことに繋がっていくと考えています。

 

 

 

 



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