皆さん、あらためましてこんにちは。大層な紹介をしていただきありがとうございます。基本的には地味な人間で、むしろ根暗で通っておりますので、面白みのない人間ということで聞いていただければと思います。まずは今日、皆さま方とのご縁をいただきまして本当にありがとうございます。今、ご紹介にもありましたように中国放送、RCCラジオにお世話になっておりまして、地味な解説でご不満の方もおられるとは思うのですが、契約をさせていただいております。
カープのOBとしましても、今年一年間、カープを応援していただいたこと、この場を借りてお礼を言いたいと思います。ただし5位という順位ですので、あまり大きな声では言えないわけですが。今年は皆さんご存じのように、コロナ禍で開幕も随分遅れたり、練習がカットになったり、今まで経験したことのないシーズンを迎えて、現場、選手たちにとっては健康管理や技術的な調整の難しかった年なのかなと思います。その結果、けが等々で不調な選手も多い傾向にあったのですが、これは12球団とも同じ条件ですので、言い訳にはならないのかなと思います。
セ・リーグは、今季はジャイアンツが優勝しました。確か7月14日ですか。そのとき調子の良かったヤクルトが一瞬首位に立ったぐらいで、それ以外は最後まで一方的な展開でジャイアンツが優勝をしてしまいました。去年もそうなのですが、個人的にはジャイアンツの強さはあまり感じませんでした。言葉は悪いのですが、正直なところ、他の5球団が少しふがいなかったかなという思いはあります。各球団それぞれの状況で、ジャイアンツは確かに投打のバランスが一番よく、それが優勝に直結したのではないかと思います。しかし、ピッチャーに目を向けると、菅野選手が唯一、爆発的な成績を残した以外は、そうびっくりするような成績でもなかったように思います。ただ出足が遅れた丸選手であったり、坂本選手であったりは、結局トータル的にいい成績を残し、岡本選手は本塁打王を取るほどの成績を残しました。そういう意味で非常にバランスが良かったので優勝したのかなと思います。
原監督は僕と同期というか、同学年なのですが、かなりの差を付けられています。あの話術であったり、行動であったりが、非常に周りにいい影響を与えたと思います。よそから取ってきて勝たなければいけないという今までのジャイアンツから脱皮して、生え抜きというか、若い選手も優遇させながら勝ったことは評価されていいのかなと僕は単純に思います。
2位の阪神も順風満帆ではなく、一歩間違えば5位にもなり得るというか、歯車の違いであったり、選手の調子であったり、使い方であったり、そういう微妙なところの差だと思うのです。阪神にしてもボーア選手などの外国人を取りましたが、長期的に機能しませんでした。大山選手とか近本選手がいますが、彼ら以外、生きのいい若い選手がいないのです。投手力がまずまずなので2位だったと思います。
3位の中日もしかりですね。序盤から中盤にかけては内容的にあまりよくなかったけれども、最後の後半に追い上げて、与田監督も前半はものすごく批評されたのに、終わってみれば7年ぶりのAクラスでした。ここは完璧に投手力でよくなったところですね。打つほうなんて、広い球場を言い訳にして長打力が不足しているとは言うのですが、結局、打てないのです。若手の台頭がもう出ていないので、やはり大きな課題は持っているなという感じですよね。
4位のDeNA、打力はいい、ピッチャーもそこそこで僕は優勝候補に挙げていました。打つほうはまずまずだったと思います。筒香選手が移籍しても、佐野選手という首位打者を取った4番打者が出たのはうれしい誤算だったと思います。投手力もまずまずなのですが、ここは怪我に泣きましたね。今永選手であったり、上茶谷選手であったり、東選手というのがいるのですが、先発が崩れたのが低迷した原因だとは思います。上手に戦えばもっと上を目指せたのかなという思いはしました。
ヤクルトに関してはもういつもどおりですね。ヤクルトファンの方がおられたら申し訳ないのですが、あそこは伝統的に怪我人が多いチームであり、もうまさに今、青木選手とか、坂本選手とか、ものすごくベテランが頑張っていますが、ベテランばかりに依存しすぎると、しっぺ返しというか、チームというのは変われない部分があります。ただし、村上選手という大砲が出てきましたから、そこは大丈夫かなというところです。それに加えて、FAはわかりますよね。FA権、どこにでも移籍できる権利を勝ち取った山田哲人選手というものすごく良いバッターがいるのですが、彼の去就というか、彼が抜ければますます戦力的にダウンすると思います。ピッチャーもそろっていないというのが何年も続いていますから、大変なチームなのかなと思います。
そして問題のカープですが、OBとしても、カープを応援する立場としても、投手力からいくと今年はさまざまな故障者が出て、3連覇の主力だった中継ぎ陣も総倒れになり、佐々岡監督からすると本当に苦労の一年だったと思います。まさにどうしようもなかったのかなという感じがします。ルーキーの森下選手は新人王、間違いないと思うのですが、プラス防御率においてもセ・リーグで2番目ですからね。最後の登板を回避して、挑戦権をもらったのに挑戦しなかったというところは賛否あると思うのですが、このルーキーの森下選手がいなかったらぞっとしますよね。まさに先ほどのヤクルトと最下位争いをしていたのではないかと思います。
故障者もかなり出ました。大瀬良選手、野村選手、中崎選手もそうです。来年は彼らが病み上がりでどの程度まで回復するかというところは一つのテーマなのですが、まず立て直しをしなければいけないのはピッチャーだと思います。苦戦をしたが故に新しい芽が出たという明るい材料もあります。新しい芽が出ました。苦戦だったから、低迷していたからこそ出た芽があります。それが塹江選手、ケムナ選手、島内選手です。そういう面々が1軍という場で経験を積めたことは来年につながると思います。崩壊状態が生んだ新しい力に期待していただければと思います。もっと言いますと、僕もコロナの影響でファームには見に行けなかったのですが、聞いたことのないような名前、田中なんとかという選手がいるのです。まだ名前を覚えていないぐらい新鮮な選手です。藤井黎來選手とか、非常に将来が楽しみな選手も1軍で経験しました。この一冬を越せばさらに期待ができるのかなと、注目していただければと思います。
来年は、大瀬良選手は当然、帰ってきてくれるでしょう。野村選手も帰ってきてくれるでしょう。床田選手も後半戦から非常に彼らしいピッチングができるようになりました。遠藤選手も今シーズンずっとローテーションを保てたというところは自信になるでしょう。まだまだ課題は多い選手だと思いますが、さらに一回り大きくなってくれる可能性はあります。中村祐太選手もいます。薮田選手は、僕個人的にはまだ不透明なところがあります。しかし、先発陣の頭数はあるので、このなかで良い競争をしてくれればと思います。そして、もうご存じだと思いますが、ドラフト3位まで、即戦力として獲得した3名の投手がおりますので、このメンバーに加わって競争をしてもらい、さらに一回り、二回りと大きくなってくれればと願っています。
ファームで眠っている逸材もおります。停滞しているといえば停滞しているのですが、球は速いのになぜ駄目なのと言いたいぐらいの岡田選手です。彼も来年はお尻に火が付くでしょう。矢崎選手という球が速くフォークの落ちも鋭いが、コントロールが全然という投手もいます。コントロールというのは何かのきっかけなのですよね。そのきっかけを早くつかんでほしいと思います。矢崎選手も本当にすごい球を投げますよ。頭が良すぎるといううわさもあるのですが、いわゆる考えすぎなところですかね。戦力的には来年に向けてなかなか楽しみなのですが、僕は野手出身で専門外なので、これは佐々岡監督、そしてピッチングコーチがしっかりと指導してくれなければいけませんね。今年は負傷者、故障者が多かったので、健康管理を大前提として、技術をもっともっと磨き、メンタルの部分もしっかり教育してもらいたいと思います。
野手に目を向けると、得点は523なので、ジャイアンツとそんなに変わらないのです。逆に今年はピッチャーがよくなかったので、得失点差で失点のほうが多かったという点ですよね。いろいろ日替わりとか、オーダーを組んだわりには得点できているのですが、投打のバランスですからね。打力プラスアルファの部分がなかったが故に、これぐらいで終わったのかな、もっと取れる能力があったのではないかなと、僕は個人的に思います。
そして、さらに言うと、あと1本が出ないのは精神的な部分です。的確なアドバイスはできないのですが、例えばノーアウト2、3塁でチャンスのとき、最初のバッターが倒れて無得点になると、次のバッターは当然プレッシャーが掛かります。そういう図式をなるべくなくすためには、最初のチャンスでバッターボックスに立った選手の心構え、気構え、準備、メンタルの強さというのが必要なわけです。それも含めて意識革命をしてほしいと思います。例えば外野フライでも1点の場面で、相手の内野手が下がっているのにポップフライを上げたり、三振して点が入らなかったり、これを少しずつなくしていく必要があるわけです。三振をしないためにはどうすればいいのか。これは3連覇のときにできていたはずなのです。単純にボールを長く持つように変えていけば、三振はおのずと少なくなります。バットに当てたら何かが起こるはずなのです。バッドに当たらなければ何も起こりません。見逃しなんて最低です。僕もけっこう見逃しはしていましたが。
ただそういうところの積み重ねが大事なのです。僕らも一生懸命、解説で言っていますが、外野フライを打つためには間違いなく高め設定なのです。それなのに低めの難しいボールを打つケースがあるので、どんどんなくしていかなければなりません。これはやはり教育だと思います。今、メンバー的には、ほぼ変わっていません。3連覇を経験した野手が多いわけですから、もう1回、その辺は気を引き締めてほしいと願うばかりです。ぬるま湯は自然にぜい肉が付いてしまうので、そこのところをもう1回、わからせる作業も必要なのかなと思います。
先ほどのピッチャーのケムナ選手、島内選手と同様に、野手に関しても、大盛選手、宇草選手が出てきたのは本当によかったと思うのです。勝ち続けて優勝争いをしていたら出られなかった選手です。それが出られるようになったことで、彼らは本当にいい経験をしたと思います。そこを生かして、このオフシーズンの生活の仕方を見直して、来年、用意ドンでいいものを出してくれればと思います。
もう少し時間がありますので、今年の堂林選手のお話をさせていただきます。堂林選手は僕が2軍監督をやっていた11〜12年前に入ってきました。当然、鳴り物入りで入ってきた選手なのですが、何が良いかというと、まず顔ですよね。プリンスという呼び名をすぐさま付けてもらったという、
その堂林が久しぶりに今年、大活躍をしました。最初は4割まで打ちました。最終的には2割7分台になってしまいましたが。言い方は悪いかもしれませんが、コロナが彼の追い風になったというところではないでしょうか。生まれたチャンスを生かして、本当によくなったと思います。
非常に力任せのバッティングしかしていなかったのが、メリハリのあるスイングができたという、そこを越えたのはあると思います。とにかくスマートなやつなので、芯で打ちたいのです。汚い打球を打ちたくないのです。ですから、あのあっさりしたバッティングもいまだに多いのです。良くなったと思っているのは、インサイドのさばき方を覚えました。スイングのメリハリ、強弱、力を入れてはいけないところまで入れていたのですが、抜くところ、入れるところを覚えた今年なのです。一冬越すと忘れる可能性はありますが、とにかく良いものがあるから、今年あれだけできたので、これは継続してもらいたいです。かわいい教え子でもありますからね。来年はもう彼も30歳になります。やっと彼の時代が来たとも言えるので、年齢的にもチームを引っ張ってもらいたいなと、個人的にも思います。ほかにも教え子はたくさんいますが、一番気になるやつでもあるので、堂林選手も応援していただければと思います。緒方監督同様、佐々岡監督2年目に期待していただければと思います。ご清聴どうもありがとうございました。
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