2019年03月11日

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第1826例会

 

 

場所:リーガロイヤルホテル広島

ゲスト卓和「広島と水道」

 

 

 

 

卓話者:広島市指定上下水道工事業協同組合 専務理事 岡増 誠 氏

 

 本日は、水に関するお話しということで、私が以前勤務していました「広島市の水道」のことと、「広島県1水道」について、お話しをさせていただきます。

 広島市の水道は、明治31年8月25日に創設され、翌年の明治32年1月1日に給水を開始しており、当時の給水人口は45,170人、1日最大給水量は5,929㎥でした。
 水道が敷設されるまでは、人々の多くが太田川の水を利用していましたが、多発した水害によりコレラなどの感染症が大流行しても、安全な飲み水が得られず、また、重なる大火に見舞われても、消火用水が得られなかった状況が有ったようです。
 折しも、明治27年に日清戦争が起こり、広島市が軍事上の拠点となったことから、軍用水道に市民用水道を併設して給水が開始されています。
 その後、市勢の発展に伴って拡張工事を重ね、昭和20年8月6日に世界最初の原子爆弾で破滅的な被害を受けた際にも、一時も断水することなく水を送り続け、平成30年に水道創設120周年を迎え、今日まで、不断水の記録を継続しています。
 平成28年度の給水人口は約123万人、給水戸数は約57万5600戸、給水能力は約63万㎥で、広島市、安芸郡府中町・坂町、山県郡安芸太田町の一部に給水する広域的な水道事業を経営されており、基本理念として「将来にわたって信頼される水道」を目指して、「いつまでも安全でおいしい水をお届けする水道」、「お客様とともに歩む水道」、「健全経営を推進する水道」と3つの柱を掲げられています。
 水源は、図の左側、中国山地の冠山に源を発し、大小72の河川の支流を集め、広島湾に注いでいる太田川をはじめ、江の川水系の土師ダム、安芸太田町の温井ダムの水を使用できる水利権を所有しており、よほどのことが無い限り、水不足は生じない状況が確保されています。
 水道水を作る工場である浄水場は、図の右側、広島市の水道発祥地「東区にある牛田浄水場」を始め、「安佐南区にある緑井浄水場」「安佐北区にある高陽浄水場」がメインで、「安芸郡府中町にある府中浄水場」、「佐伯区湯来町に小規模な浄水場が4か所」ありますが、その内「府中浄水場」は、水需要の減少と水道経営の効率化の観点から、近い内に廃止されることになっています。
 また、昭和57年に水道事業経営の統合を行った「安芸水道企業団」の給水エリア、昭和60年に合併した現在の佐伯区の一部のエリアには「広島県から水道水を購入して給水している」地域もあります。

 水道水を皆様方のご家庭・事業所にお届けする給水方式は、広島市を含む周辺部の地形が山に囲まれていることから、浄水場で作った水道水を配水管に送り、「己斐配水池・黄金山配水池」など給水エリア177か所にある「配水池」に水道水をポンプアップして、「配水池」からの傾斜を利用して給水する「自然流下方式」で届けられており、水圧を利用して配水管から給水する「直結方式」、ビル等の屋上に受水槽を設置して給水する「受水槽方式」、近年ではビル等の屋上に受水槽を設置せず、ポンプで水圧を増圧して給水する「直結増圧方式」があります。
 また、南区の「似島・金輪島」には、海底管で水道水が供給されています。
 広島市水道局では、4年ごとに中期経営計画を策定しておられ、主要施策として、「安全でおいしい水の供給」、「水道施設の更新・改良」、「災害対策の充実」を掲げて事業展開をされています。
 「安全でおいしい水の供給」では、「水質管理体制の強化」を柱に水源から蛇口までの水質管理を徹底するため、「水源での水質検査」、「取水場、浄水場での水質監視」、「魚類自動監視装置・油膜検知装置・水中油分自動監視装置」を浄水場などに設置すると共に、「水質監視モニター装着」を給水エリアの末端地域に設置し、24時間連続で水道水の成分測定・解析・監視、「水質試験車」による現場での水質調査、また、給水エリア93か所で、ご家庭の蛇口で水質検査が行われています。 
 「安心な水の安定供給」、「環境負荷の低減」では、安心な水を安定的にご使用頂けるように配水管路などの整備を行うとともに、環境負荷の低減を行うため、水道創設100周年を迎えた平成10年に太田川の源である冠山が位置する源流域の森林を取得し、水源涵養機能の高い広葉樹主体の水源林として整備するため、「水源涵養モデル事業」に着手しています。
「水道施設の更新・改良」では、浄水場や配水池などの施設が339か所・配水管など管路の延長数は4,817qを保有しており、浄水場の機能統合、浄水場間のネットワークの整備を行うとともに、「管路の更新」では、すべての配水管に耐震管を採用して、年間30q、管路の耐震化を行う計画となっています。
 「災害対策の充実」では、南海トラフ巨大地震等を想定した災害対策として、水道施設の耐震化、配水幹線の相互連絡管などバックアップ機能の強化、応急用資機材の整備を推進する計画となっています。
 
 また、広島市内で震度5弱以上の地震が発生した時には、飲料水を確保する観点から「主要配水池」の遮断弁が自動的に作動する装置も整備されています。
 余談ですが、私が勤務しています上下水道組合は、広島市水道局と災害復旧応援協定を締結しており、昨年7月に発生した豪雨災害では、7月7日から水道局と協議を行って、水道施設の早期復旧に尽力いたしました。
 「財政状況」は、中期経営計画を4年サイクルで作成されており、将来にわたって、給水の安全性・安定性を確保するための主要施策を計画的に推進されるともに、一層の効率的な経営を推進され、健全な財政確保に努められており、  平成28年度の資金残高は79億円、企業債残高は744億円となっています。

 また、広島市の水道料金は、1か月の使用量が10㎥(500mlのペットボトルで2万本分の量)で874円となっており、東京都を含む政令指定都市19都市のうち2番目に安価で、広島県内21市・町のうちでは3番目に安価な状況です。

 このペットボトルは、水道局が100円で販売している「飲んでみんさい広島の水」ですが、10㎥分の量を購入すると200万円のお金が掛かります。

 ちなみに、私の家庭は夫婦2人暮らしで、水道料金と下水道使用料が2か月で7,800円、水道料金が約半分の3,900円、60日で割ると1日当たり65円で、食事・洗濯・お風呂・トイレの水を使用させて頂いております。

  (平成29年度の資金残高は約82億円、企業債残高は約728億円)

次に、「広島県1水道」構想についてお話しをさせていただきます。

 広島県と県内21の市町がそれぞれ運営する水道事業の統合を目指す「県内1水道」の検討組織が、平成30年4月に設立され、協議が行われています。

 お手元に平成31年1月18日付の中国新聞切り抜きをお配りしていますが、記事の見出しでは、「水源別に5エリア」とあります。
 これは、水道水を作るには、川から原料の水を取得することができる「水利権」を所有していることが、「重要」であることを表しています。
 ここで、広島市と広島県の水道経営を例にお話ししますと、
広島市は、太田川・土師ダム等の水を主水源として、浄水場で水道水を製造し、水道水を貯める容器の配水池を作り、水道水をご家庭や事業所にお届けする配水管を整備して、蛇口から水道水をご利用いただいて、お客様から水道料金をお支払い頂く、事業経営となっています。

 一方、広島県は、水源の確保が困難な市町に対して、水道水又は水の卸売販売を行っておられ、「水道用水供給事業」を経営されています。
 事業のエリアは、新聞記事にございます太田川エリア、小瀬川・八幡川エリア、沼田川エリアの3つのエリアで、広島県内の10市5町及び愛媛県1市・1町(今治市・上島町)に水道水又は水の供給をされており、広島県に費用を支払い水道水又は水の供給を受けている市町は、一部の市町で自前の浄水場で水から水道水を製造し、水道水を貯める容器の配水池を作り、水道水をご家庭や事業所にお届けする配水管を整備して、蛇口から水道水をご利用頂いて、お客様から水道料金をお支払い頂き、広島県が各市町に対して経費を請求・徴収する事業経営となっています。

 新聞記事にもございますように、水道事業は施設型産業で、多くの浄水場や配水管路を所有して維持管理を行う必要があり、今後、人口が減少して、収支の悪化が見込まれる市町の水道施設を統廃合するとしても、膨大な費用と労力が必要となることは、避けて通れないと思います。

 また、一番重要なことは、水道料金の格差だと思います。
 1か月の使用量が10㎥の比較では、広島県内で一番安いのが大竹市で707円、一番高いのが江田島市で2,311円、金額で1,604円・倍率で3,3倍の料金格差が生じており、この料金格差をどの様な考え方で整理するかには、多くの協議時間が必要ではないかと思います。

 締めとなりますが、今後も広島県を中心に広域連携の協議が進んでいく中で、
皆様方のご家庭や事業経営にとって、水道料金の取り扱いがどうなるかは重要なことであると考えますし、私が勤めています上下水道組合も広島市水道局と連携して、24時間体制で水道事業をサポートしている組織であることから、「広島県1水道」の動向には注視していく事をお伝えして、終わりとさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 



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