2018年06月11日

 >> 一覧へ

第1797例会

 

 

場所:リーガロイヤルホテル広島

会員リレー卓話「お宝の価値について」

 

 

 


赤羽 克秀 

 

 骨董とは通常100年以上昔のものを言うらしい。骨董・古美術とは私見であるが、最も個人的価値観の上に成り立つものであると思う。この個人的価値観を生み出す原因となるものが「骨董菌」といわれるものである。この菌に感染すると、骨董品<古美術品からガラクタまで>をみると熱くなる。つまり熱が出るのである。この熱のせいで品物の真贋の区別もできなくなり、そのものの客観的価値も判断できなくなる。
 贋作(偽物)をつかまされるのは、この様な熱くなる人であり、欲のある人である。欲とは金銭欲、独占欲さらに掘出し根性である。さらに骨董菌の副作用として、女房、旦那に対し、購入した物の正直な値段を言えなくなり、さらには、家庭の財政的基礎を脅かすことになり、家庭不和を生ぜしめる。
 従って、そのような骨董菌の悪い副作用を排除するためには、骨董品・古美術品の正しい価値を測定し、認識し、自己も配偶者も子どもたちも納得することが重要である。
 私はその価値として、以下の9つの価値に分析できると思っている。
@芸術的価値
創作技能もすばらしく万人から芸術の域に達しているという評価を受けるに値するもの
A鑑賞的価値
飾って楽しむことの価値、鑑賞陶器という分野が作られた
B時代的価値
江戸―明治―大正―平成という各時代を経て、今でも継続している価値 
C歴史的価値
歴史の1ページを飾ったような品物に対して付加される価値であり、歴史の特徴を感じさせるもの
D作者的価値
有名作家により作られたもの。その時代の政治的・権力的名声よりもすぐれた能力評価を受けた人であることが重要
E希少的価値
 再生産は不可能であり、絶対的に生産量の少ないもの。又は、過去の大戦争、大災害の中で大事に伝えられてきたも
F財産的価値
自己が所有し、楽しんだ後さらに売却しても資金化できるもの
G個人的価値
祖先から伝わっているもの。又は父、母の思い出の品物などの価値でその個人に特有のもの
Hその他の価値
 生(うぶ)なものであること。つまり多くの人の目にさらされていないもの。又は有名な人の所蔵品・大家の伝生品等であったとの価値

 ここで1つ実証的分析を行ってみようと思う。
私は2001年に東京プリンスホテルで開催された「ザ・骨董ショー」なるイベントに出向き、明治4年に発行された1円金貨を購入した。これは明治4年の新貨幣条例制定時に発行されたもので、1,841,288枚作られている。直系は13.51mm重さ1.67g。品位は金900/銅100である。
明治4年12月に出された太政官布告658号によれば、従来の金札1両に対し、新貨1円を同等とするとしている。
 江戸末期の天保小判はデパートのコイン売場でも22〜25万円で売られているし、同じ1両の価値をもつ豆板銀は1枚5〜8万円で売られている。
 ちなみに1両小判はあの銭形平次の投げた1文銭で4000枚の価値である。
 この様な1円金貨は現在の物価上昇率を適正に反映させて場合、いくらに評価すればその価値は合理的なものとなるのであろうか。
 そこで、かけそば、日本酒、白米、巡査の初任給、ラムネ、理髪料金等14項目の金額において明治4年と平成30年の物価の倍率を計算し、その平均値を算出したところ、少なくとも28,000倍以上であるという結果が出た。そこで考えられるのは、明治4年の1円は物価のスライドからして現在の28,000円であれば良いということになる。
 しかし私は、80,000円で購入しており、差額の52,000円は何に対して支出したお金ということになるのか。
 つまり、この52,000円が1円金貨に対して私の認識した美術的価値である。
 その内容の分析をあえて行うならば、その彫刻をした加納夏雄という当時の金工の名人に対する芸術的価値、作者的価値、135年前のものであるという時代的価値、希少的価値、財産的価値として認識できるものである。
 さらに重要なことは、この1円金貨には権威ある日本の貨幣商協同組合の保証書がついているということであり、偽者ではないという、流通性に対してもその価値を求めることができる。私は多分にこのようなものを買って、遊んで楽しんでいるのであり、自己満足している。女房、子供以外は誰にも迷惑をかけていないという自負(?)もある。
 もう1つ別の観点から考察すると、古美術品、骨董品に対し、その価値を認識できる人は見るだけでなく、集めたくなる独占欲の強い人である。この人たちは俗にマニア、コレクターと呼ばれている。少し前は数奇者、好事家と呼ばれていた。
 それではこの様なコレクターとしての条件はいかなるものであろうか。
 それには少なくても三つの条件が必要である。第一は骨董菌に冒されていること。骨董品をみるとすぐ熱を出し、自分のものにしたくなるということである。
 第二は気力・体力があること。つまり手に入れたいという欲望が継続し、その品物を探しつづける根気があり、妻・夫の反目に耐え、あちこちの骨董店をこまめにまわる体力が必要である。
 第三は決断力である。骨董品・古美術品は同じものは2つとなく、一期一会の精神で出会ったらそれを逃さないという購入の決断ができるかということである。
 このようなコレクターの三つの条件を備えた人が、往々にして騙されることがある。騙されても騙されても、そこから立ち上れるのは、骨董菌の作用であり、本物のお宝を手に入れた時の快感、満足感である。
 そこで最後に騙される人の条件を3つ列挙しよう。これは「何でも鑑定団」で有名な中島誠之助氏がその著書の中で述べていることであるが、まず第1は「欲があること」。これはコレクターの条件にも通じるものである。
 第2は「勉強不足であること」。中途半端な勉強で、専門家ぶる人は贋作者の格好の餌食である。
 第3は「小金のあること」。つまり、相手が値引きをしてくれたり、こちらの言い値を了解してくれたら購入できる程度の自由になる小金をもっているということである。
 これらのコレクターの条件・騙される人の条件に適合する人は、頑張ってお宝を集めていただきたい。コレクター同士の自慢会は結構楽しいものである。ちなみは私のペンネームは「騙戯亭 古凛彌」。座右の銘は「玩物喪志」と「奇貨居くべし」の2つである。

 

 

 



■ リンク

■ お問い合わせ

■ サイトマップ

■ Privacy Policy

© Hiroshima Center Rotary Club All rights reserved.