2018年06月04日

 >> 一覧へ

第1796例会

 

 

場所:リーガロイヤルホテル広島

会員リレー卓話「医療は社会を幸せに導くのか、あるいは困窮に導くのか」

 

 

 


藤村 欣吾 

 

 日本の医療費は年々急速に増大し国家予算の50%に迫ろうとしている。老齢人口の増加、医療技術の進歩、などが大きな要因であるが、いつまでも現役世代へ経済的負担をかけるわけにはゆかない。国も色々と施策を行っているが根本的な解決は難しい。
 医療費の現状を見まわしながら日常的に自分たちでできることは何かを探し、実行に移すことが医療費の節約に少しは役に立つのではないかと思うことをお話ししたい。
平成27年度の医療費は42兆3600億円で10年前に比し1.3倍増加している。
負担の割合は保険料が48.8%、医療機関での窓口での支払いが12.3%、で残り38.9%は所得税、地方税で賄われている。いわゆる税金からの持ち出しが40%近くになっている勘定である。
 次にこの医療費がどのように使われているのかについては平成27年度では70.9%(約30兆)が医科診療費(入院、外来での診療費、医療機関の維持、管理、運営費)、18.8%(7兆9000億)が薬局調剤医療費(薬代、薬局維持管理、運営費)でこの2つで90%を占めている。この中で医科診療費は減少しているにもかかわらず、薬局調剤費が年々増加している。これは医学研究の進歩によって数多くの新薬が登場してきたことによることが大きく、いわゆる“医学の進歩が国を滅ぼす”といわれた所以である。
 新聞紙上でも高価ながんに対する免疫治療薬の記事が踊っている。肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬は、年1350万円(4年前には3400万円)にまで薬代は下げられたが、それでも毎月100万円以上の薬代がかかる計算になる。このような類の新薬が数多く保健適応となり、適応拡大され薬剤費の高騰に関係しているが、多くの患者さんにとっては治療の選択肢が広がり福音となっている。しかし月100万円以上薬代を健康保険で支払うには個人にとっては相当の経済的負担となる(健康保健3割の人は約30万円以上の薬代となる)。このため日本では高額療養費制度が作られており、国が税金から補てんし高額な治療費であっても個人負担は所得に応じて約10万円以下と極力少なくなっています。この制度は新薬の認可にも影響すると考えられます。すなわち現在多くの高価な新薬が開発され(月の薬剤費数百万から数千万円)欧米では認可、適応されているが日本では認められず、患者さん、医療従事者にとっては残念な現状があります。これは保健適応となればいくら高価な薬剤であっても高額療養費制度の対象となり、医療費に跳ね返ってくるため未保健適応新薬が多い一つの理由と思われます。欧米では承認されていても医療費を費用対効果で制限しており、このような新薬に関して推奨はしても保健では支払うとは限らない点が日本とは異なっています。平成27年度の国民医療費医科分の内訳では、対象患者の多い循環器系疾患に約20%、次いで悪性新生物(がん)に14%、筋骨格疾患に約8%と、この3疾患に40%以上の医療費が投じられている。
 これらの疾患の発症は生活習慣に依存することが明らかになっており、日常の生活習慣を改善維持することにより、これらの疾患への罹病を遅らせ回避することができ、医療費の削減の一つになると考えられます。そこで「がん予防12か条」に従って日常生活を見直し、健康寿命を少しでも長く保つことが個人の幸せにも直結する効果が期待できます。
 次に国民医療費の約60%は65歳以上の医療費が占め、これは高齢者人口が増えるにつれて当然のことです。しかしこの中で終末期と言われる回復の見込みのない状況で使われている医療費が1兆円前後と試算されています。終末期医療に対するアンケート調査によると(日経新聞2018.5.22)年齢が長じるにつれ延命治療を望む人は徐々に減少し、70歳台になると10%弱になり変わって緩和治療を望む人が60%と増加する傾向にあることが示されています。日本人の終末期医療に対する考え方が変化し、自分らしく最後を全うすることを望む傾向にあると思われます。このためには自分自身の意志を最期の段階で貫く目的で生前に意思表示(リビング・ウイル;living will)を行う事が勧められています。米国では40年以上前から法制化され、ヨーロッパでも今世紀に入って公布されている。
 日本ではACP(Avance Care Planning)として現在各医療機関で取り組みがなされ、主治医、家族を交えて自分の終末期について確認を行うことが進められています。すなわち元気なうちから自分の気がかりな点、価値観、自分らしさを家族や周辺と人たちと話しあい、将来病気の末期になった場合にはその見通し、治療や療養に関する選択肢などをあらかじめ家族、主治医と話し合い、自己決定ができなくなった段階においても家族や医療人が本人の尊厳を損なうことなく人生を全うしていただくことを目指したものです。
 以上生活習慣の改善と、健康診断の受診、終末期における自分自身の尊厳を守る心づもりは、人生の豊かさに結び付くとともに、尊厳を損なうような過剰の医療が見直され、弱者の一燈に過ぎないが、私たちが医療費の高騰を抑えることに少しでも寄与できる可能性があると思います。

 

 

 



■ リンク

■ お問い合わせ

■ サイトマップ

■ Privacy Policy

© Hiroshima Center Rotary Club All rights reserved.