2018年02月05日

 >> 一覧へ

第1781例会

 

 

場所:リーガロイヤルホテル広島

ゲスト卓話「スペインの素顔」

 

 

 

米山奨学生  フェレイロ ポッセ ダマソ君

 

 ヨーロッパで今、最も注目を集めている話題の一つが、スペイン北東部、カタルーニャ自治州の独立問題です。なぜこのような問題が起きるのでしょうか。その疑問に答えるために、まずスペインという国の文化的かつ歴史的な事情を簡単に説明したいと思います。
 スペインに対して皆様が持っているイメージは、闘牛、フラメンコ、トマト祭りなどと思いますが、実際には、これらのイメージはスペインの素顔と一致しません。むしろ、かってのフランコ体制下で観光客を増やすために、人工的に作られたイメージなのです。
 今も昔も、スペインは一つではなく、行政的には17の自治州から成り立っています。その中でも、特に自治意識が強い自治州が、ガリシア、バスク、カタルーニャの三つの自治州です。

総合情報
 ・国名ースペイン王国
 ・位置ーヨーロッパ南西部のイベリア半島
 ・面積ー504.782Km2(50位)
 ・人口ー45,989,016人(29位)
 ・領土ー本土以外に、西地中海のバレアレス諸島や、大西洋のカナリア諸島、北アフリカのセウタとメリリャ、アルボラン海のアルボラン島
 ・共通国語ースペイン語、スペイン語以外にガリシア語、バスコ語、カタローニャ語

1.なぜカタルーニャが独立を目指し、マドリードの中央政府はそれを強硬に抑圧し続けるのでしょうか?
 まず、歴史的な理由が背景にあります。スペインの各地では、基礎となっている文化が異なります。例えば、北西部のガリシアには、あちこちにケルト文化の遺跡が見られますが、南部のアンダルシアには、イスラム文化の影響が強かったため、モスクや宮殿などが多く残っています。つまり、国内の多様性がとても豊かだということが、スペインの特徴だといえます。それにも関わらず、マドリード王室、あるいは中央政府中央部(カスティーリャ)はその多様性を認めないことが多く、郊外部(ガリシア・バスク・カタルーニャ)をカスティーリャ文化と統一する試みによって、歴史上の紛争が度々生じていました。その結果、それぞれの郊外部の言語が禁じられた時期があり、郊外部の文化が抑圧され、反カスティーリャ的気持ちが高まっていきました。この問題は、フランコ独裁時代の頃に悪化し、1975年民主主義が始まって以降も、解決せず無視され続けてきました。
 さらに、カタルーニャの独立騒動には経済的な理由もあります。カタルーニャは、スペインのGDPの2割を稼いでいる豊かな自治州です。その分、税金の負担が重いのですが、その割に、中央政府からの財政資金の配分は少ないのです。「自分達の稼ぎを他の自治州にばかり使わないで欲しい」という不満は、昔からずっと存在していたのです。

2.スペインにおける近年の独立運動
・ETA(「バスク祖国と自由」1959-2011)
・Galiza Ceive(「ガリシアを自由に」1980-1988)
・Catalunya Lliure(「カタローニャを自由に」1989-1996/2010-現在)

3.どのような取り組みをしたら、独立の問題が解決できるのでしょうか?
 昔から続いてきている問題だからこそ、すぐに解決しにくいと思いますが、まず中央政府と郊外部の極端なナショナリズムを弱め、相互コミュニケーションを改善する必要があります。その次に、20世紀初頭から現代にかけて続いてきた、アイデンティティに関しての問題を解決する必要もあります。最後に、最も困難な問題ですが、国全体の経済状況を均一にする経済政策を講じる必要もあるのではないかと考えます。

 広島中央ロータリークラブの皆さん、ありがとうございました。また、ロータリー米山奨学会への恩は一生忘れません。

 

 

 

 



■ リンク

■ お問い合わせ

■ サイトマップ

■ Privacy Policy

© Hiroshima Center Rotary Club All rights reserved.